研究課題
レーザーを用いた血流計測と血管イメージング、磁気共鳴現象を利用した非接触給電システム
キーワード
コヒーレント波、光センシング、生体計測、電磁界解析他
研究の背景
(血流イメージング)癌細胞は、血管内皮細胞増殖因子を生み出し血管内皮細胞の遊走と増殖を促進させる。血管内皮細胞は伸張していき癌組織の中に網目状の血管ネットワークを形成し、癌に酸素や栄養を供給する。従って血管ネットワークの形成を遅らせる方向に制御することは治療に有効であると考えられている。しかし、血管ネットワークを血流速など動的な情報を元に鮮明で定量的な画像として取得した例は無い。このような画像は癌の成長メカニズムを探究するうえで重要である。
(非接触給電)原子炉の廃炉作業には、ロボットの導入が欠かせない。安全にロボットへ充電するには、コンクリート壁越しのワイヤレス給電(もしくは充電)が必要になると考えられる。磁界共鳴方式によるワイヤレス給電は、2007年にマサチューセッツ工科大学のKurs氏らにより発明され、優れた伝送性能を有している。この磁界共鳴方式を更に発展させコンクリート壁を通過しても電力損失が発生しないシステムを実現すれば廃炉用のロボットに応用できる。
研究のねらい
(血流イメージング)生体の深部まで高い空間分解能を保持したまま細血管をイメージングできる計測システムは未だ実現していない。レーザー光のもつコヒーレント性を利用した計測原理を新たに見出し、この原理を応用した新規の血流計測システムの開発を行うことが研究のねらいである。また、光検出器から血流データの解析に至るまでシステムの全体を研究することにより実用性の高い研究を行う。
(非接触給電)本研究室で開発した商用電源周波数を用いた磁界共鳴方式のワイヤレス給電装置は、コンクリートでの電力損失がほとんど発生しない。電磁界解析シミュレータを独自に開発し、最適設計を行うことで伝送性能を大幅に向上させることが研究のねらいである。また、実際に製作、実装も行い実用性の高い研究を行う。
目標と戦略
(血流イメージング)現在までに本研究室で開発した血管血流イメージング装置は、皮下の細血管のイメージングまでは実現している。よってメラノーマ(皮膚癌)などには応用できる。しかし、より深部にある血管のイメージングは難しい。実現には、根本的な血流の計測原理から探求する必要がある。研究目標として乳癌などのより深部にある腫瘍内血管のイメージングを目指す。
(非接触給電)電磁界解析シミュレータおよび等価回路解析などを用いることで最適設計を行い大幅な伝送性能の向上を目指す。目標として20 cmのコンクリート壁越しに伝送効率70 %以上、伝送電力 500 W以上の性能を目指す。また、本装置は磁性コアを有するので軽量化も大きな課題であり、重量5 kg以下を目指す。
更新日: 2022/09/06