田窪洋介(新居浜高専)/ Yosuke Takubo (National Institute of Technology, Niihama College)
柳生 慶(大阪大学)/ Kei Yagyu (Osaka University)
ヒッグス物理を用いた第5の力の探索 / Exploring the Fifth Force through Higgs Physics
(概要)自然界には重力、電磁気力、弱い力、強い力の4種類の基本的な力が存在することが知られていますが、
第5の新たな力が存在するかどうかは興味深い謎として残されています。
実際に、素粒子の標準理論を超える新物理では、さまざまな物理的動機から導入される新たなゲージ対称性
から第5の力が現れるため、その検証は新物理の探求において極めて重要となります。
本講演では、ヒッグスセクターの物理が、自発的に破れたU(1)ゲージ対称性を持つ新物理の検証において
重要な役割を果たすことを示します。
2024.10.30 13:30 - 14:30 A1号館414
柳生 慶(大阪大学)/ Kei Yagyu (Osaka University)
戸田 陽(北海道大学)/ Yo Toda (Hokkaido University)
電子質量の時間変化と宇宙論パラメータ / Varying electron mass model and cosmological parameters
(概要)宇宙論の標準模型であるΛCDMモデルは、現在いくつかの課題に直面しています。
その中でも特に重要な観測上の問題の一つは、遠方観測と近傍観測によるハッブル定数の不一致、いわゆる「ハッブルテンション」です。
この問題を解決するために、ΛCDMモデルを超える新しい物理が提案されており、その一つが電子質量の時間変化を考慮するモデルです。
本セミナーでは、電子質量の変化が宇宙論パラメータに与える影響について詳しく議論します。
こうした影響は、宇宙背景放射(CMB)やバリオン音響振動(BAO)などの観測データを通じて検証されます。
また、最近の解析結果から、CMBの時代における電子の質量が現在よりも大きかった可能性が支持されている点についても触れる予定です。
2024.10.08 13:15 - 14:15 A1号館414
西脇 健二(Shiv Nadar Institution of Eminence)/ Kenji Nishiwaki (Shiv Nadar Institution of Eminence)
量子論的粒子の波束効果は見えるのか?/Can we observe wave-packet effects of quantum particles?
(概要)量子論的な粒子のプロファイルを平面波的な波として議論する際には、この波が直接は見えないヒルベルト空間におけるものであることに
起因する理解上の難しさがあり、こちらは皆様よくご存知だと思います。更に、平面波に関しては、
関連する量子遷移の確率の "平均的な" 振る舞いしか知ることが出来ないという制限があります。
この制限は、平面波が規格化不可能な状態である性質に起因します。この技術的制限は、対応する粒子のエネルギーが局在化している状態(波束)を
考えれば原理的に解決することは昔から知られていました。しかし一方で、果たしてこの波束記述による "平均的な振る舞いを超えた" 振る舞いは、
実際に観測可能なのでしょうか?
本公演では、波束による記述が、長年謎とされてきたある種の重たいベクトル・メソンの崩壊過程における、
実験値と平面波による理論値との大きな不一致を、説明しうるという我々の最近の研究に関して、
関係する量子力学の背景知識のレビューも含めながら、一からお話したいと思います。
2024.7.25 13:15 - 15:30 50周年記念館3F会議室
榎本 成志(中山大学)/ Seishi Enomoto (Sun Yat-sen University)
時間変動する背景場が引き起こす非摂動的粒子生成と宇宙論への応用
(概要)背景場が断熱的に時間変化するとそれと相互作用する粒子が非摂動的効果により生成されうる.宇宙論的にはインフレーションを引き起こすインフラトン場や strong CP 問題の解決に期待されるアクシオン場,また質量の起源となるヒッグス場など,宇宙の発展において背景場がダイナミカルに変化する状況が想定され,そういった背景場の変化による非摂動的粒子生成の宇宙論的な影響を探ることは興味深い.
本講演ではそのような非摂動的粒子生成の起こる理論背景と解析方法を紹介する.特にCやCP対称性の破れた状況で粒子生成が起こると粒子と反粒子が非対称に生成されうるため,宇宙のバリオン数の問題への応用も期待される.
2024.2.10 13:00 - 14:00 A1号館414
端野 克哉(福島高専)/ Katsuya Hashino (Nat'l Inst. of Tech., Fukushima College)
相転移由来の重力波観測による新物理効果の探索
(概要)現在の素粒子標準理論では宇宙の物質反物質の非対称性などが説明できない事がすでに知られているため、標準理論には無かった新しい効果を含む新物理理論を考える必要があります。その標準理論を超えた新物理効果によって初期宇宙の段階で不連続的な相転移が実現できる可能性があります。そのような相転移が実現する場合、重力波が生じる事が知られています。重力波は透過性が強く、相転移が起きた初期宇宙の情報を現在の私たちに届けてくれます。本講演ではその重力波のエネルギーの観測を用いた新物理効果の探索可能性について紹介します。
2024.1.22 13:15 - 14:15 A1号館414
上村 直樹(広島大)/ Naoki Uemura (Hiroshima Univ.)
Second Higgs doubletを用いたニュートリノ質量
(概要)素粒子標準模型ではニュートリノ質量はゼロである。しかし、スーパーカミオカンデ実験によりニュートリノ振動が観測されたため、ニュートリノは微小な質量をもつことが分かった。そのため、ニュートリノ質量を説明する新たな理論が必要である。本発表では、ニュートリノ質量を説明する候補の1つであるニュートリノとのみ結合する新たなヒッグス粒子を追加した模型を紹介する。またこの模型のもつ現象論的側面についても触れたい。なお本講演は、arXiv:0906.3335v2等に基づいたレビュー発表である。
2023.12.26 15:00 - 16:00 A1号館414
安部 牧人(呉高専)/ Makito Abe (Nat'l Inst. of Tech., Kure College)
大規模数値シミュレーションによる銀河形成過程の理論的研究
(概要)宇宙の星々は銀河というシステムの中で形成される。また、銀河から放射される光や銀河風といったフィードバックは銀河間ガスの物理状態に大きな影響を及ぼす。したがって、宇宙初期から現在に至るまでの宇宙の進化史を解き明かす上で、銀河形成・進化過程の理論モデルの構築は極めて重要となる。銀河は、星形成やそれに伴う輻射・超新星爆発による内部フィードバック、周辺環境との相互作用や銀河同士の合体などが複雑に入り交じって進化していく。このため、銀河形成過程の理論的研究には数値シミュレーションが必要不可欠である。近年では大規模な宇宙論的流体力学計算によって、最大~100 Mpcスケールに及ぶ銀河形成・進化過程をモデル化し、個々の銀河が持つ性質や統計的観測量について議論されている。本講演では、銀河形成シミュレーションで考慮すべき物理過程や数値シミュレーションにおける取り扱いについて解説するとともに、近年の代表的な大規模銀河形成シミュレーションプロジェクトとそれらの成果などについて紹介する。
2023.12.21 15:00 - 16:00 A1号館414
伏見 賢一(徳島大学)/ Ken-Ichi Fushimi (Tokushima Univ.)
野村 敬明(四川大学)/ Takaaki Nomura (Sichuan Univ.)
Boosted indirect signal in multi-component secluded dark matter scenarios
(概要)本講演では多成分暗黒物質が標準模型の粒子とdark phtonを通じて弱く相互作用するシナリオを議論します。
この場合には暗黒物質と核子や電子との散乱断面積は小さくなり、直接検出における検証は難しく制限も弱くなっています。
そこで特殊なシグナルを得る可能性として、重い暗黒物質が対消滅し大きな運動量を持った軽い暗黒物質を生成する過程を考え、
軽い暗黒物質がdark photonを放射する場合の間接検出実験からの制限・検証可能性を模索します。
特に暗黒物質の残存量の観測値を説明するパラメータ領域における現在の制限と検証可能性についての結果を紹介します。
講演の前半で暗黒物質やdark photonに関するレビューを行い、後半で研究の解説をしたいと思います。
2023.7.31 15:00 - 16:00 C1号館C0142
上坂 優一(九州産業大学)/ Yuichi Uesaka (Kyushu Sangyo Univ.)
ミューオン原子を使った荷電レプトンフレーバー非保存過程探索
(概要)現在の素粒子標準模型では、3つのレプトンフレーバー数(電子数、ミュー数、タウ数)が良い保存量となっており、荷電レプトンにおけるレプトンフレーバー非保存(CLFV)過程が強く抑制されていることが知られている。
しかし標準模型を超える新物理が存在すればCLFV過程が起こる確率は大きくなることが期待されるため、新物理発見を目的とし、これまでCLFV探索実験は世界各地で精力的に行われてきた。
これまで注目されてきたCLFV過程の中に、ミューオン-電子転換過程がある。
これはミューオンを原子核に束縛させたミューオン原子を用いて探索を行うCLFV過程であり、現在日本のJ-PARCにおいてCOMET実験やDeeMe実験での探索が計画されている。
本講演ではCLFV探索の現状を概観すると共に、ミューオン原子を用いたCLFV探索に関する講演者の最近の研究を紹介する。
2023.7.31 16:00 - 17:00 C1号館C0142
稲垣 知宏(広島大学)/ Tomohiro Inagaki (Hiroshima Univ.)
カルタン形式のF(R)修正重力理論
(概要)アインシュタインの一般相対性理論は、現在までに様々
な現象により検証されているが、宇宙の加速膨張を説明
するには、何らかの拡張が必要であると考えられている。
F(R)修正重力理論では、アインシュタイン・ヒルベルト
作用に現れる曲率Rをその関数に拡張することで、宇宙
の加速膨張を説明できる。我々は、これをカルタン形式
で記述することで、時空の捩れに対応するトーションや
物質場であるフェルミオンによる寄与を導入し、初期宇
宙の現象を調べている。本セミナーでは、修正重力理論
についてレビューし、カルタン形式のF(R)修正重力理論
で分かってきたことについて報告する。
2023.7.27 15:00 - 16:00 A1号館414
稲垣 知宏(広島大学)/ Tomohiro Inagaki (Hiroshima Univ.)
対称性が織りなす素粒子の世界
(概要)素粒子の理論は、ゲージ対称性、一般座標共変性といった連続的な対称性、パリティ、時間反転、
荷電共役といった離散的対称性を基礎に構築されています。ゲージ対称性が自発的に破れること
によって物質は質量を持つようになり、時間反転対称性が破れることで我々の世界は粒子に満た
されるようになります。カイラル対称性が動的に破れると、クォークが核子に閉じ込められ陽子、
中性子が大きな質量を獲得します。
ここでは、物質を構成する最も基本的な粒子である素粒子とその間の相互作用について紹介し、
素粒子理論が基礎とする対称性とその破れが、我々の世界の創造にどのような寄与をするのか、
何が分かっていて、何が分かっていないのか、お話します。
2023.7.27 12:00 - 13:00 B5号館B0531
川崎 雅裕(東京大学宇宙線研究所)/ Masahiro Kawasaki (ICRR)
Q-ball
(概要)TBA
2023.7.3 13:15 - 14:45 オンライン(東邦大学とのジョイントセミナー)
濱口 幸一(東京大学)/ Koichi Hamaguchi (Tokyo Univ.)
Q-ball について
(概要)Q-ball とは何か、超対称性模型における Q-ball とはどのようなものか、その概要を説明しようと思います。
2023.6.23 15:00 - 17:00 ハイブリッド(東邦大学とのジョイントセミナー)
Nicholas Benoit (Hiroshima Univ.)
Effects of renormalization group kernels on the lightest neutrino mass in the Type-I Seesaw model
(概要)The Type-I seesaw model is a common extension to the Standard Model that describes neutrino masses. The Type-I seesaw introduces heavy right-handed neutrinos with Majorana mass that transform as Standard Model electroweak gauge singlets. We initially study a case with two right-handed neutrinos called the 3-2 model. At an energy scale above the right-handed neutrinos, the effective neutrino mass matrix is rank degenerate, implying the lightest neutrino is massless. After considering renormalization effects below the two right-handed neutrinos, the effective neutrino mass matrix remains rank degenerate. Next, we study a model with three right-handed neutrinos called the 3-3 model. Above the energy scale of the three right-handed neutrinos, we construct the effective neutrino mass matrix to be rank degenerate. After solving for the renormalization effects to energies below the three right-handed neutrinos, we find the rank of the effective neutrino mass matrix depends on the kernel solutions of the renormalization group equations. We prove, for the simplest kernel solutions, the effective neutrino mass matrix remains rank degenerate. This is based on arXiv:2210.00165 [hep-ph].
2022.11.28 10:30 - 11:30 A1号館414
岡田 寛(APCTP)/ Hiroshi Okada (APCTP)
最近の標準模型を超えた物理達(Recent new physics beyond the standard model(SM))
(概要)素粒子の出発地点となる標準模型からどの程度うまくいっているのかを簡単に説明した後、標準模型では説明が難しいであろう最近のトピック「muon anomalous magnetic dipole moment」「B->K*mu,mu anomaly」「W boson anomaly」「dark matter」「neutrino physics」等を簡単に紹介する。その中でどういった拡張をすればそれぞれが説明でき、且つより簡単なモデルでより多くのモデルを説明できるかをについても議論する。
2022.11.15 13:30 - 14:30 A1号館414
谷本 盛光 (新潟大学)/ Morimitsu Tanimoto (Niigata Univ.)
ニュートリノのCPの破れから フレーバーの対称性を探る
(概要) ダイナミックスがわからない場合、対称性が有効なアプローチである。3世代のフレーバー構造を理解するためにしばしばフレーバー対称性がもちいられてきた。近年、高次元理論のコンパクト化から導かれるモジュラー対称性をクォーク / レプトンのフレーバーに適応しようという試みが盛んとなっている。モジュラー対称性はコンパクト化された内部空間の幾何学的対称性として現れる。この対称性の破れは、modulusと呼ばれるスカラー場が真空期待値をもつことによっておこるが、同時にCP対称性も破る。すなわち、モジュラー対称性をもつクォーク / レプトンのモデルを構成し、modulusの 期待値を決めると、CPの破れの大きさが予言できる。このセミナーでは、モジュラー対称性の理論の枠組みの概略を紹介し、いくつかのモデルでのCPの破れを示し将来の実験での検証可能性を議論する。
2022.11.11 13:15 - 14:45 A1号館1階 会議室A
谷本 盛光 (新潟大学)/ Morimitsu Tanimoto (Niigata Univ.)
素粒子の世界を拓く
(概要) はじめに、素粒子の標準理論はどのようにして確立したかを歴史的に概観します。そして標準理論が内包している謎を解説し、それに答えることのできる新しい理論の必要性について述べます。最後に新しい理論の手がかりを得るために将来どのような実験が計画されているかを紹介します。
2022.11.10 16:45 - 18:15 A1号館1階 プレゼンテーションルーム
冨谷 卓矢(東京大学 宇宙線研究所)/ Takuya Tomiya (Univ. of Tokyo, ICRR)
神岡で検証を目指す物理と研究生活
(概要) ニュートリノ観測やそれを用いた星や宇宙の観測、素粒子の大統一理論の検証が行われているスーパーカミオカンデ、2027年に実験開始を目指して準備が進められているハイパーカミオカンデ。その実験に関わっている大学院生がどのような研究生活を送っているのか、実際に携わっている目線から実験、作業のことについて話したい。
2022.10.26 12:30 - 13:10 C2号館2階 C0224
新穂 みちる(お茶の水女子大学)/ Michiru Niibo (Ochanomizu Univ.)
ニュートリノ観測実験JUNOを用いた暗黒物質の探索
(概要) 暗黒物質(DM)は、銀河団衝突を含む種々の天文学的観測によって存在が確実視されており、
我々の宇宙のおよそ1/4のエネルギーを占めるとされています。その観測と性質の解明のために、DM
を直接原子核と散乱させる直接探索や、DMが放出した光子を観測する光学的探索が行われてきましたが、
DM由来と断定できる信号は今日まで検出されていません。そこで近年、現行の探索実験と相補的な強み
を持つニュートリノでのDM探索に注目が集まっています。本研究では、MeVスケールの質量を持つDMが
対消滅や崩壊を起こした際に放出するニュートリノ信号を解析し、将来的なニュートリノ観測実験の1つ
であるJUNOがDMの検出可能性を有することを明らかにしました。今回のセミナーでは、ニュートリノを
用いたDM探索のレビューと、本研究で明らかになったJUNOのDM検出可能性についてお話しします。
2022.07.11 14:00 - 15:00 A1号館414 またはオンライン(東邦大学とのジョイントセミナー)
藤間 崇(金沢大)/ Takashi Toma (Kanazawa Univ.)
軽い媒介粒子を伴う
擬南部ゴールドストーン暗黒物質の直接検出
(概要) 近年の高精度の直接検出実験により、暗黒物質と原子核の間の相互作用に強い制
限が与えられている。擬南部ゴールドストーン暗黒物質は非相対論的極限で原子
核との散乱を抑制し、この強い制限を自然に満足することが知られている。しか
し、媒介粒子の質量が暗黒物質の質量に比べて非常に小さい場合、原子核との反
応率が有限な値として予言される。さらに通常の暗黒物質の場合と比較して原子
核反跳エネルギーの依存性が異なり、他の暗黒物質模型と区別できる可能性を示す。
2022.04.28 13:00 - 14:00 (オンライン)
これより過去のセミナー